トリコチロマニア(抜毛症)
トリコチロマニア(抜毛症)は、髪の毛、眉毛、まつ毛などを繰り返し抜き、やめようとしても減らせないことで、脱毛や強い苦痛、学業・仕事・対人関係への支障が生じる病気です。単なる癖や意志の弱さではなく、医学的には「強迫症および関連症群」に含まれます。ただし、強迫性障害と同じ病気という意味ではありません。診察では、抜毛による脱毛、やめようとした経過、生活への影響を確認し、皮膚の病気やほかの精神疾患で説明できないかも検討します。
特徴
抜毛には、勉強中や動画を見ているときに、十分意識しないまま手が動く場合と、太さや手触りが気になる毛を探して意識的に抜く場合があります。頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげなども対象となり、抜く部位が変わる事例もあります。抜く前に緊張し、抜いた後に安心感を覚える人もいますが、これは全員にみられる特徴ではありません。脱毛を帽子やメイクで隠す、人目を避けるなど、生活への影響にも注意が必要です。抜いた毛をかむ・飲み込む場合は、まれに消化管へ毛がたまることがあるため、受診時に医師へ伝えてください。
どんな人がなりやすいの?
トリコチロマニアは年齢や性別を問わず起こり得ますが、典型的には思春期の前後に始まり、医療機関を受診する成人の事例では女性が多いと報告されています。ただし、「女性特有の病気」や「特定の性格の人がなる病気」ではありません。不安、緊張、退屈、疲労などが抜毛のきっかけになる場合はありますが、ストレスだけが原因とは限りません。気分の落ち込みが続く場合はうつ病、強い不安が続く場合は不安症(不安障害)も含め、抜毛以外の症状を医師へ伝えることが大切です。
どうしたらいいの?
まず1~2週間、「いつ、どこで、何をしているときに、どの部位を抜いたか」を記録します。記録の目的は自分を責めることではなく、抜毛のきっかけと繰り返しやすい状況を見つけることです。治療プログラムでは、行動に気づく訓練、毛に触れにくい環境をつくる刺激統制、こぶしを握る・両手で物を持つなどの競合反応を組み合わせる「習慣逆転法」が中心となります。治療を成功させるポイントは、最初から完全にゼロを目指さず、「抜く前に気づけた」「回数が減った」と段階的に評価することです。薬やサプリメントは自己判断で使用せず、医師に相談してください。
まとめ
トリコチロマニアは、本人の努力不足で起こる行動ではなく、適切な評価と治療が必要になることのある病気です。脱毛が広がる、頭皮や皮膚に傷・出血・化膿がある、学校や仕事、人付き合いを避ける、抜いた毛を飲み込むといった場合は、早めに精神科・心療内科または皮膚科へ相談してください。受診時は、始まった時期、抜く部位と頻度、直前の気分、生活への影響、試した対策をメモしておくと、診察内容を整理しやすくなります。注意点として、家族や周囲は叱責や過度な監視を避け、本人の同意を得ながら受診を支えてください。一人で抱え込まず、症状に合った治療方法を一緒に検討することが改善への第一歩です。
からだの不調
行動面の不調