重ね着症候群
重ね着症候群とは、うつ状態や不安、対人関係の問題などで成人期に精神科を受診した人を詳しく評価すると、幼少期から続く発達上の特徴が背景に見いだされる場合を説明するため、日本で提唱された臨床概念です。DSMやICDに収載された正式な診断名ではありません。原概念では、旧分類における高機能型広汎性発達障害に近い特徴が想定されていましたが、現在の自閉スペクトラム症(ASD)と完全に同じ意味ではありません。現在の精神症状と発達歴を分けて確認するための視点として理解することが大切です。
特徴
重ね着症候群と呼ばれてきた状態では、表面にうつ病や不安症、対人関係の問題、ひきこもりなどが現れる一方、背景に会話の意図を読み取りにくい、予定変更への対応が難しい、感覚刺激で疲れやすいといった特徴が続いている場合があります。ただし、現在の病気が見かけだけという意味ではなく、それぞれに適切な治療が必要です。治療で改善しにくいことだけを理由に、発達障害と判断しないことが注意点です。
どんな人がなりやすいの?
幼少期から、集団活動で強く疲れる、曖昧な指示を理解しにくい、予定変更に戸惑う、興味の偏りや感覚の敏感さがあるなどの特徴が、家庭や学校など複数の場面で続いていた人では、発達特性が関係している可能性があります。学業成績が良かった、周囲の支援があった、本人なりの工夫で補っていたため、進学や就職後に初めて困難が目立つ事例もあります。ただし、特徴がいくつか当てはまるだけでは診断できません。性格や努力不足と決めつけず、幼少期から現在までの経過を丁寧に確認します。
どうしたらいいの?
治療を続けても同じ困りごとが残る場合は、自己判断で発達障害と決めつけず、主治医へ幼少期からの特徴を相談してください。診察では、現在の症状、生育歴、家庭・学校・職場での様子、家族からの情報などを整理します。心理検査や質問票は評価を補うもので、結果だけで診断するものではありません。支援プログラムの目的は、現在の精神症状への治療と、本人の特性に合う環境調整を並行することです。内容には、作業の細分化、指示の文書化、予定の見える化、感覚刺激への配慮、心理教育などがあります。
まとめ
重ね着症候群は、心の不調の原因を一つに決める病名ではなく、現在の精神症状と、幼少期から続く発達上の特徴をともに見直すための考え方です。対応を成功させるポイントは、すべてを発達特性で説明せず、困りごとごとに治療と支援を組み合わせることです。例えば、抑うつは改善しても仕事の混乱が続く事例では、本人を責めるのではなく、業務の優先順位を明文化し、同時進行を減らす方法を検討します。自己判断で服薬を中止せず、死にたい気持ちや強い抑うつがある場合は、発達評価よりも安全確保と現在の症状への治療を優先してください。
こころの不調
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行動面の不調