タイムスリップ現象
タイムスリップ現象とは、過去の出来事が「単なる思い出」ではなく、まるで現在起きている出来事のように感じられてしまう現象です。
これは自閉スペクトラム症の方でみられることがあり、「過去と現在が混ざる」という意味で“エクムネジー”と呼ばれる症状に含まれます。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)のフラッシュバックに似ていますが、タイムスリップ現象の特徴は、つらい出来事だけでなく、嬉しかった体験や楽しかった記憶でも起こりうることです。
本人にとっては非常にリアルで、嘘や大げさではなく、「本当に今、体験している感覚」が生じている点が重要です。
特徴
この現象では、昔の出来事を語るときに時間経過の感覚がほとんどなくなり、「さっきのこと」のように話すことがあります。さらに、当時の感情が強くよみがえり、心が大きく揺れたり、身体が緊張したりする場合もあります。
また、過去の記憶に意識が引き込まれ、今の状況よりも「過去の体験の方が優先される」ように感じられることもあります。
これは演技ではなく、本人の脳の中で過去と現在が本当に重なって感じられているためで、本人の努力不足や性格の弱さでは決してありません。
理解されにくい症状だからこそ、周囲の理解がとても大切です。
どんな人がなりやすいの?
自閉スペクトラム症の方は、体験を「非常に具体的に」「鮮明に」記憶する傾向があり、そのため出来事が時間の中で整理されにくく、タイムスリップ現象が起きやすいと考えられています。特に、強い感情を伴った出来事(失敗・叱責・恥ずかしかった体験・嬉しかった成功体験など)は、強く残りやすく影響します。
また、「気持ちの切り替えが苦手」「経験を整理するのが難しい」という特徴がある場合にも起こりやすくなります。
ただし、これは“異常”というより、脳の感じ方の特徴が影響している現象であり、「困っているなら支援が必要」というスタンスで考えることが大切です。
どうしたらいいの?
まず、「これはおかしいことではなく、起こりうる現象だ」と理解することが安心につながります。
そして、
- 「これは過去の出来事。私は今、安全な場所にいる」と確認する
- 今の感覚(温度、音、香りなど)に意識を戻す
- 深呼吸やゆっくり身体を動かして“現在”を感じる
といった方法が役立つことがあります。
周囲の人は「そんなこと忘れなよ」と否定せず、「当時は大変だったね」「今は一緒に大丈夫だよ」と安心できる声かけをすることが大切です。
もし頻繁に起こる、学校や仕事に支障がある、強い不安を伴う場合には、医療機関やカウンセリングで相談することで、適切なサポートや心理的支援を受けることができます。
まとめ
タイムスリップ現象は、過去の出来事が今まさに起きているように感じられる状態で、自閉スペクトラム症の方で見られることがあります。つらい体験だけでなく、楽しい記憶でも起こるのが特徴です。
本人にとっては非常にリアルな体験であり、理解されず苦しくなることもあります。しかし、現象を正しく理解し、安心できる対応や適切な支援を受けることで、少しずつ落ち着いて向き合えるようになることが多いです。
決して一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談することが、安心して生活していくための大切な一歩になります。
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