産褥期精神病
産褥期精神病(産後精神病)とは、出産後に幻覚・妄想、著しい混乱、躁状態や重い抑うつなどが急速に現れる精神科救急の状態です。出産1,000件あたり約1~2件とまれですが、多くは産後数日から2週間以内に発症し、数時間から数日で悪化することがあります。現在の診断基準では独立した一つの病名ではなく、産後に始まった双極症(双極性障害)などの気分エピソードや精神病性障害として、症状、身体状態、その後の経過を総合的に評価します。
特徴
産褥期精神病では、ほとんど眠らない、話し続ける、急に活動的になる、強く疑う、会話がまとまらない、現実と合わない確信を持つ、声が聞こえるなどの症状がみられます。数時間のうちに高揚と落ち込みが入れ替わる事例もあります。周産期うつ病では抑うつ気分や意欲低下が中心ですが、産褥期精神病では現実を判断する力が大きく乱れます。本人に病気の自覚がない場合もあるため、家族が「普段と違う」と感じた時点で相談することが注意点です。
どんな人がなりやすいの?
特に注意が必要なのは、以前に産褥期精神病を経験した人、双極Ⅰ型障害や統合失調感情症の診断がある人、母親や姉妹など近い親族に産褥期精神病の経験者がいる人です。既往がある場合、次の出産後に約半数で再発するとの報告もあります。ただし、精神科の受診歴がない人にも初めて発症する可能性があります。睡眠の乱れなどは発症の引き金になり得ますが、性格や育児能力が原因ではありません。高リスクの人は妊娠前または妊娠中から、産科と精神科へ既往歴を伝えてください。
どうしたらいいの?
産後に強い不眠、混乱、躁状態、幻覚・妄想などが現れたら、本人と赤ちゃんを二人きりにせず、産科・精神科・救急へ直ちに連絡してください。診療プログラムの目的は、母子の安全確保と原因の確認です。感染症、甲状腺異常、子癇、薬剤の影響などを調べ、多くの場合は入院して睡眠を確保し、薬物療法などを行います。症状によっては電気けいれん療法も検討されます。服薬や授乳を自己判断で中止せず、精神科・産科・小児科と相談することが大切です。
まとめ
産褥期精神病への対応を成功させるポイントは、産後の疲れや寝不足として様子を見ず、急な不眠、混乱、幻覚・妄想を緊急サインとして捉えることです。以前に発症した事例では、妊娠前から服薬方針、産後の睡眠確保、夜間の育児分担、見守る人、緊急連絡先を文書で共有します。早期治療により回復が期待できますが、退院後も経過観察と再発予防が必要です。自傷・他害のおそれ、赤ちゃんの安全を保てない言動、激しい興奮、けいれんや意識低下がある場合は、ためらわず救急要請を検討してください。
こころの不調
からだの不調
行動面の不調