解離症(解離性障害)
解離症(解離性障害)は、記憶、意識、知覚、感情、行動、自己の感覚などのつながりが不随意に途切れ、本人に強い苦痛や生活上の支障が生じる病気の総称です。
考え事に集中して周囲への注意が薄れる体験は誰にでもありますが、それだけで解離症とは診断されません。
記憶の空白や現実感の低下が繰り返され、通学・仕事・人間関係へ影響しているかを確認します。心的外傷や強いストレスと関連することはありますが、「心が自分を守るために起こす反応」と原因を一つに断定することはできません。
特徴
主な病型には、自分の体験を思い出せない解離性健忘、自分や周囲が現実ではないように感じる離人症、自己感や行動の連続性が途切れ、日常の記憶にも空白が生じる解離性同一症などがあります。
離人症では、違和感があっても現実そのものが変化したわけではないと判断できることが一般的です。解離性同一症も、映像作品のような劇的な人格交代として現れるとは限りません。体の動きや感覚に症状が現れる病型もあります。
時間が飛ぶ、声が聞こえるといった体験だけでは診断できず、PTSD、統合失調症、てんかん、睡眠不足、薬物の影響などとの区別が必要です。
どんな人がなりやすいの?
解離症は、事故、災害、暴力、虐待、いじめなど、本人の対処能力を超える体験と関連する場合があります。ただし、同じ出来事を経験した人全員に生じるわけではなく、明確なきっかけが確認できないケースもあります。「まじめ」「責任感が強い」「感受性が高い」といった性格だけを原因とする根拠はありません。現在の安全、周囲の支援、睡眠、飲酒・薬物、不安や抑うつなどを総合的に評価します。
悪夢、回避、フラッシュバックがある場合は心的外傷後ストレス症(PTSD)との関係も確認します。
どうしたらいいの?
記憶の空白、強い離人感、覚えのない行動が続く場合は、心療内科や精神科へ相談してください。受診前に、症状が起きた日時、持続時間、直前の出来事、睡眠、服薬・飲酒、周囲が見た様子を記録すると診察に役立ちます。症状が出たときは、日付や現在地を声に出して確認し、足裏の感覚や目に見える物へ注意を戻す方法が役立つことがあります。
一般的な治療プログラムの目的は、過去を急いで思い出すことではなく、安全と生活を安定させることです。治療内容は病型に応じた心理教育や精神療法が中心で、薬は主にうつ病、不安、不眠などの併存症状に用います。自己流で記憶を掘り起こさないことが注意点です。
まとめ
解離症では、症状を完全に消すことや、すべての記憶を取り戻すことだけが治療の成功ではありません。記憶の空白や危険な行動が減る、本人の状態に応じて学校・仕事を再開できる、症状の前触れに気づいて支援を求められることも大切な回復です。
家族は「演技」「気の持ちよう」と決めつけず、無理に過去を聞き出したり、推測を事実として伝えたりしないでください。突然の意識障害、けいれん、片側の麻痺、激しい頭痛、大量服薬、自傷や行方不明の危険がある場合は、一人にせず119番や救急医療機関へつなげましょう。
こころの不調