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解離性健忘

目次

解離性健忘は、通常の物忘れでは説明できないほど、自分が体験した出来事や生活史などの重要な自伝的記憶を思い出せなくなり、強い苦痛や生活上の支障が生じる解離症の一つです。

多くは心的外傷や強いストレスと関連しますが、原因となる体験が診察時に明確とは限りません。「心が記憶を閉じた」と仕組みを断定することもできません。診断の目的は、記憶の空白を確認するとともに、頭部外傷、てんかん、脳血管障害、薬物・アルコールなど別の原因を除外することです。詳しくは解離症(解離性障害)をご覧ください。

特徴

解離性健忘では、特定の出来事や期間を思い出せない限局性健忘、出来事の一部だけが抜ける選択性健忘が多くみられます。自分の名前や生活史を広く忘れる全般性健忘はまれで、目的のある移動や放浪を伴う場合は「解離性とん走を伴う」と整理されます。事例として、事故前後の数日だけ記憶がない、周囲から行動を指摘されても覚えていない状態があります。

新しい出来事を覚える力や一般知識は比較的保たれる場合がありますが、症状には個人差があります。悪夢やフラッシュバックを伴う場合は心的外傷後ストレス症(PTSD)との関係も評価します。

どんな人がなりやすいの?

解離性健忘は、事故、災害、暴力、虐待、いじめ、身近な人の死など、本人にとって圧倒される体験の後に生じることがあります。ただし、同じ体験をした人すべてに起こるわけではなく、「まじめ」「優しい」「我慢強い」といった性格だけで説明できません。

発症や持続には、体験の内容、現在の安全、周囲の支援、過去のストレス、睡眠、不安や抑うつなど複数の要因が関係します。離人症やPTSD、うつ病を伴う場合もあるため、記憶以外の症状や生活への影響も医師へ伝えることが大切です。

どうしたらいいの?

突然の記憶障害がある場合は、解離性健忘と自己判断せず、まず医療機関で身体・神経の病気や薬物の影響を確認してください。頭部打撲、けいれん、意識障害、麻痺、激しい頭痛を伴う場合は救急受診が必要です。受診時は、記憶が抜けた期間、直前の出来事、服薬・飲酒、周囲が見た行動を整理し、可能なら家族に同行してもらいます。

治療プログラムの目的は、記憶を無理に戻すことではなく、安全と生活の安定を確保することです。内容は支持的な精神療法を基本とし、安定後に必要な心理的支援を検討します。誘導的な質問や自己流の催眠を避けることが注意点です。

まとめ

解離性健忘では、記憶が自然に戻る場合もあれば、空白が残る場合もあり、経過には個人差があります。思い出した内容が常に完全で正確とは限らないため、家族や支援者が推測を事実として教え込んだり、繰り返し問い詰めたりするのは避けましょう。治療の成功は、すべてを思い出すことだけではなく、安全に生活できる、混乱や自傷の危険が減る、学校や仕事へ戻れることも含みます。

記憶が急に戻った後は強い不安や抑うつが生じる場合があるため、継続的な安全確認が必要です。行方不明、自傷の恐れ、激しい混乱、けいれん、麻痺がある場合は、一人にせず119番や救急医療機関へ相談してください。