重ね着症候群
重ね着症候群とは、表面に見えている精神疾患の背後に、発達特性が重なって存在している可能性を考えるための概念です。
たとえば「うつ病」と診断され治療を受けていても、その背景に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の傾向がある場合があります。服を重ねて着ているように、外側の症状の内側に、もう一つの特性が隠れているという比喩から生まれた言葉です。
症状が改善しにくいときに、「なぜ苦しさが続くのか」を丁寧に見直すための重要な視点です。
特徴
発達特性が背景にある場合、対人関係の行き違い、段取りの苦手さ、感覚過敏などが慢性的なストレスとなり、二次的にうつ状態や強い不安が生じることがあります。抗うつ薬などの標準治療で一定の改善はみられても、生活上の困難が変わらなければ再び症状が強まることもあります。
ここで重要なのは、「治療が効かない=本人の努力不足」ではないということです。症状の奥にある生活特性を理解することで、初めて適切な支援につながります。ただし、すべての治りにくいうつ病が発達特性によるものとは限らず、慎重な評価が必要です。
どんな人がなりやすいの?
子どもの頃から
- 空気が読めないと言われた
- 忘れ物が多い
- 強いこだわりがあった
- 集団活動が極端に疲れる
などの経験がある人は、発達特性が関係している可能性があります。診断基準を完全に満たさなくても、「傾向」があるだけで日常生活の負担は大きくなります。真面目で努力家な人ほど、自分を責め続け、結果としてうつや不安を発症しやすい傾向があります。青年期や社会に出た後に初めて困難が表面化することも少なくありません。
どうしたらいいの?
治療を受けているのに改善が不十分な場合は、主治医に発達特性の可能性について相談してみましょう。幼少期の様子、学校での困りごと、仕事や対人関係のパターンを振り返ることが重要です。必要に応じて心理検査や発達評価を行うことで、特性の有無や支援の方向性が明確になります。
発達特性がある場合は、薬物療法だけでなく、環境調整、具体的な時間管理法、対人スキル支援などが効果的です。自己判断で決めつけず、専門家と一緒に整理することが安心につながります。
まとめ
重ね着症候群は、表面の精神症状の奥に発達特性が重なっている可能性を示す考え方です。うつ病や不安症の治療が思うように進まないとき、その背景にASDやADHDの傾向が隠れていることがあります。
大切なのは、「なぜ繰り返しつまずくのか」を責めるのではなく理解することです。適切な評価と特性に合った支援を受けることで、生きづらさは確実に軽減できます。気づくことは弱さではなく、自分を守るための第一歩です。
行動面の不調
こころの不調
からだの不調