脱抑制型対人交流症
脱抑制型対人交流症(DSED)は、子どもが見知らぬ大人へためらいなく近づき、年齢や文化に合わない親しげな言動を繰り返す、トラウマ・ストレス関連症群の一つです。単に社交的、人なつっこいというだけでは診断されません。
診断では、複数の脱抑制的行動に加え、乳幼児期の深刻なネグレクト、養育者の度重なる交代など、極端に不十分な養育歴との関係を確認します。一般に使われる愛着障害という言葉と、医学上の診断は同じ意味ではありません。
特徴
代表的な特徴は、知らない大人への警戒が乏しい、年齢に合わないなれなれしい会話や身体接触をする、養育者から離れても振り返って確認しない、ためらわず知らない人について行こうとすることです。これらのうち複数が継続し、家庭・園・学校など複数の場面でみられるかを確認します。養育者へ慰めを求めにくい反応性愛着障害とは症状が異なります。
また、発達障害に含まれるADHDの衝動性やASDの対人特性だけでは説明できないかも評価します。
どんな人がなりやすいの?
脱抑制型対人交流症は、乳幼児期に必要な慰めや応答を著しく受けられなかった、主な養育者が何度も替わった、特定の養育者との関係を築きにくい環境で生活した子どもに生じる可能性があります。ただし、こうした経験をした全員が発症するわけではなく、親の性格や一度の対応を原因にはできません。
乳幼児期に始まる子どもの病気で、症状が思春期まで続くことはありますが、成人の対人距離の近さだけから過去にさかのぼって診断することはできません。心的外傷症状があればPTSDも確認します。
どうしたらいいの?
見知らぬ人について行く、抱きつくなどの行動が繰り返される場合は、小児科、児童精神科、児童相談所、地域のこども家庭センターへ相談してください。受診前には、行動の相手・場所・頻度、養育者を確認する様子、家庭と学校での違い、これまでの養育環境を記録します。
支援プログラムの目的は、子どもを叱って警戒させることではなく、安定した養育環境と具体的な安全行動を整えることです。養育者支援、学校とのルール共有、併存症への治療を組み合わせます。押さえつける、無理に抱きしめるなどの強制的な愛着療法は行わないことが注意点です。
まとめ
脱抑制型対人交流症は、単なる人なつっこさではなく、早期の養育歴と見知らぬ大人への脱抑制的な行動を合わせて評価する子どもの病気です。支援の成功は、行動が完全に消えることだけでなく、外出時に養育者を確認する、誘われたら決まった大人へ相談する、安全な距離を選べるといった変化で判断します。
家族は子どもを「軽率」「愛情が分からない」と責めず、医療・福祉・学校で同じ安全ルールを共有してください。現在のネグレクトや虐待が疑われる場合は189、連れ去りなど差し迫った危険では110番へ連絡します。
こころの不調